【薬学博士監修】界面活性剤の種類と特徴をご紹介!化粧品に含まれやすい界面活性剤とは
化粧品のパッケージに、『界面活性剤フリー』という表示があるスキンケアを見かけたことはありませんか。『界面活性剤=肌に良くないもの』というイメージがある人も多いかもしれません。しかし界面活性剤は化粧品にとって大切な役割があり、たくさんの種類があります。
今回は化粧品に含まれる界面活性剤の種類について、詳しくまとめました。それぞれの特徴や、配合されやすい化粧品のタイプもご紹介しているので、化粧品を探しているときはぜひ参考にしてみてください。
目次
- 界面活性剤とは
- 必ずしも『界面活性剤=悪い物』ではない
- 化粧品に含まれている界面活性剤の種類
- 陰イオン(アニオン)型
- 陽イオン(カチオン)型
- 非イオン(ノニオン)型
- 両性イオン(アンホ)型
- 石油系界面活性剤と、植物性界面活性剤の違い
- 石油系界面活性剤
- 植物性界面活性剤
界面活性剤とは
界面活性剤とは、化粧品においてどのような役割があるのかご存知ですか。界面活性剤は1つの分子内に、水と混ざりやすい親水性と、油となじみやすい親油性を同時にもっている成分のこと。
油分の多いメイクや、汚れなど水だけでは洗い流しにくい成分を洗い落としやすくするという特徴があります。そのためクレンジングや、洗顔料、シャンプーなどに配合されやすい成分です。
また界面活性剤は本来なら混ざり合わない水と、油を混ざりやすくするという特徴から、化粧水や美容液、乳液、コンディショナー、制汗剤、口紅など、洗い流す化粧品以外にもさまざまな化粧品に配合されています。
必ずしも『界面活性剤=悪い物』ではない
『界面活性剤フリー』という化粧品を見かけると、界面活性剤=悪い物と思いがちですが、すべての界面活性剤が肌に悪いというわけではありません。
界面活性剤は油分が多く水や、汗で落ちにくいメイクをお湯で洗い流しやすくするために、クレンジング剤に含まれていますが、洗い流す必要のない乳液や、ジェル、クリームなどにも配合されています。
乳液や、ジェル、クリームなどに配合される界面活性剤は、水と油が完全に混ざり合った『乳化』状態のため、洗い流す必要はありません。
また化粧品に含まれる成分は、界面活性剤を含めて厳しい基準※をクリアしたものが販売されているため、安全性の高いものが多いと言えます。
参照:厚生労働省 化粧品・医薬部外品等ホームページ 添加物関連https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iyakuhin/keshouhin/index.html
しかし界面活性剤の中には洗浄力の高いものや、肌刺激になりやすいものもあるため、安全性が高くても肌質によっては合わない場合もあります。自分の肌と相性の良い界面活性剤かどうか、界面活性剤の種類や、含まれやすい化粧品などを確認しておくと良いでしょう。
化粧品に含まれている界面活性剤の種類
界面活性剤が肌に悪い影響を与えるものではないとわかりましたが、どのような界面活性剤が化粧品には含まれているのでしょうか。
界面活性剤は一般的に、このような4つのタイプに分類されています。
- 陰イオン(アニオン)型、
- 陽イオン(カチオン)型、
- 非イオン(ノニオン)型
- 両性イオン(アンホ)型
それぞれの特徴について詳しく見ていきましょう。
陰イオン(アニオン)型
陰イオン(アニオン)型の界面活性剤は、水に溶けると陰イオンになる親水基をもっています。肌刺激は比較的強く、石けんやシャンプー、クレンジング、洗顔料に配合されることが多い成分です。
また陰イオン型の界面活性剤は、石けん系と、非石けん系という2つのグループに分かれています。
非石けん系の陰イオン型は、洗浄力の高い石けん系よりもマイルドな洗浄力のため、肌刺激が気になる人や、肌がデリケートなときにおすすめです。代表的な成分には、アミノ酸界面活性剤があります。
一方石けん系の界面活性剤は、他の界面活性剤の中でも肌に負担がかかりやすく、高い洗浄力が期待できます。肌に刺激がかかりやすいため、肌のバリア機能の低下や、肌負担が気になるときは、注意が必要な成分です。
ちなみに陰イオン型の界面活性剤は、このような成分名で配合されています。
- 高級脂肪酸石けん
- ラウリル硫酸ナトリウム
- ラウレス硫酸ナトリウム
- N‐アシルアミノ酸塩
- アルキル硫酸エステル塩…など
陽イオン(カチオン)型
陽イオン(カチオン)型の界面活性剤は、水に溶けると陽イオンになる親水基をもっています。肌刺激は強く、泡立ちや洗浄力は弱めなため、顔に直接つけることがないトリートメントや、コンディショナー、リンスなどに配合されることが多い成分です。
また陽イオン型の界面活性剤は、このような成分名で配合されています。
- ベンザルコニウムクロリド
- ベヘントリモ二ウムクロリド
- 塩化アルキルトリメチルアンモニウム…など
非イオン(ノニオン)型
非イオン(ノニオン)型の界面活性剤は、水に溶けてもイオン化しない性質があり、他の界面活性剤とも相性が良い成分です。肌刺激が比較的弱く、洗浄力は強くても泡立ちは弱いという特徴があります。
さらに他の界面活性剤と組み合わせやすいことから、洗浄成分としてだけではなく、乳液やクリーム、ジェルなどの乳化剤や、可溶化剤、増粘剤としても広く使われています。
非イオン型の界面活性剤は、名前の最後に「~グリセリル」や、「~水添ヒマシ油」と付くものが多いです。このような成分があります。
- ステアリン酸グリセリル
- PEG‐60水添ヒマシ油…など
両性イオン(アンホ)型
両性イオン(アンホ)型の界面活性剤は、陽イオン、陰イオンの両方の性質をもっていて、周囲のphがアルカリ性の場合は陰イオン、酸性なら陽イオンになります。
洗浄力が比較的高く、泡立ちも良く皮膚刺激が少ないという特徴があるので、ベビー用の刺激が少ないシャンプーや、高級シャンプー・リンスなどに配合されることが多い成分です。
名前の最後にこのように『~ベタイン』とつく成分名が多いので、成分表をチェックするときに参考にしてみてください。
- コカミドプロピルベタイン
- アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン…など
石油系界面活性剤と、植物性界面活性剤の違い
ここまでは界面活性剤の成分名や、性質の特徴について詳しくみてきました。今度は界面活性剤の成分がどんなものから作られるのかをご紹介します。
界面活性剤は主に石油由来の成分と、天然由来の成分に分かれます。肌につけて洗い流さない化粧品の場合は石油由来の界面活性剤は避けて、天然の植物由来の界面活性剤を配合したものを選んだ方が良いでしょう。
どちらにもメリット、デメリットがあるので、配合されやすい化粧品の種類や、成分の特徴をチェックしておくと自分の肌質に合った化粧品を選びやすくなりますよ。
石油系界面活性剤
石油系界面活性剤は、石油を精製して作られる成分の1つで、『合成界面活性剤』とも呼ばれています。
大量生産しやすいというメリットがあり、洗浄成分に優れていて泡立ちが良くするため、低価格のシャンプーや洗顔料などにも配合されやすい成分です。
一方石油系界面活性剤は、洗浄力が高いため、頻繁に使うと肌の保湿に必要な皮脂膜や、肌のバリア機能が低下してしまうデメリットがあります。乾燥肌が気になる人や、デリケートな肌質の人は、肌刺激が比較的弱めの天然系界面活性剤を選んだ方が良いでしょう。
植物性界面活性剤
天然由来の界面活性剤は、石油系界面活性剤よりも洗浄力がマイルドで、泡立ちもやわらかいという特徴があります。肌刺激はやや弱めなので、乾燥肌や敏感肌におすすめです。
石油系界面活性剤よりも大量生産しにくく、中~高価格のシャンプーや洗顔料などにも配合されやすい成分です。
界面活性剤の特徴と種類を知って化粧品を選ぼう
界面活性剤は泡立ちを良くしたり、メイクや肌の汚れを洗い流しやすくしたりと、化粧品には欠かせない成分の1つです。ただ成分の種類によっては肌刺激が強めのものもあるので、含まれている界面活性剤の種類や、特徴を知っておくと、自分に合った化粧品を選びやすくなりますよ。
普段使っているスキンケアの成分表や、どんな界面活性剤が不使用なのか、化粧品選びの際はチェックしてみてください。
監修者
薬学博士・杜 垚
東京大学農学部を首席の成績で卒業、同年東京大学農学部長賞を受賞。
東京大学大学院薬学系研究科で分子薬学博士号を取得。
大手化粧品会社にてスキンケア、ヘアケア、クレンジングの研究開発や成分配合に長年従事。
2020年株式会社Merry Plusを設立、代表取締役に就任。
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